「転居しました。」石田育絵
「転居しました。」石田育絵
ビブロス(リブレ)/BE×BOY COMICS
○セレブ社長×平凡リーマン
飛行機で偶然隣り合わせた二人。
引っ越し魔の久継が淳之の引っ越しを手伝わせて欲しいと持ち掛け…
付き合うまで、そして付き合ってからの、
仕事・嫉妬様々な問題を一つずつ消化していく二人を丁寧に描いている。
急速に縮まった関係故に心が伴っていない不安感や、
生活水準・環境の違いで、関係が続かないと確信している淳之。
リビングに作った"巣"がその象徴として、
淳之のアライグマっぽさと合わさって上手く機能している。
仕事にやりがいを感じていて、自分の足で立っている誇りもある。
それを拠り所に、セレブの久継と一緒にいられる。
甘やかされるだけじゃなくて、少しでも対等でいたいと考える淳之の、
一進一退の気持ちの成長と、それを嫉妬で薙ぎ倒してくれちゃう久継の、幸せ二人暮らし。
ビブロス(リブレ)さんらしいラグジュアリー感。
時代を感じる部分もあるけれど、それも味!
「高島孝一郎の理想の恋人」栖山トリ子
「高島孝一郎の理想の恋人」栖山トリ子
新書館/ディアプラス・コミックス
○会社の後輩×隠れナルシスト
ナルシストなのが、後輩の北村にバレてしまった高島。
黙っている代わりに要求されたのは、セフレになること。
覚悟を決めるが、北村はEDで…
高島はどこかズレてて天然で、乳首の手入れも怠らない、
努力を欠かさない好感の持てるナルシスト。
怒ってても、褒められると一瞬で浮かれちゃうところが可愛い。
無表情だけど、期待もあらわな北村がツボ。
徐々に感情がちょい漏れしていくのに、キュンとさせられる。
高島はゲイではないので、
セフレを要求されるわ、いちもつ見せられるわで怯えっぱなしだし、
嫌悪感丸出し。
北村は北村で、高島のズレた言動で、
ED治療どころか萎えバロメーターが、振り切れっぱなし。
脅しから始まるのに、シリアスな展開ではなく、
二人のやりとりにくすっと笑ってキュンともしてしまう。
年下攻めの王道ものではあるけれど、
ちょっとズレたキャラの魅力が物語の良いアクセント。
「梅谷くんの春」幾田むぎ
「梅谷くんの春」幾田むぎ
コアマガジン/drap COMICS DX
イマドキ男子×地味っ子の、大学生同士のキュンキュンもの。
さくらの飼い猫モモが、梅谷の部屋のベランダに迷い込んだ事から、
急速に距離を縮めていく二人。
さくらのわたわたっぷりを、梅谷が面白がって仲良くなっていくけれど、
梅谷の性格故か、嫌な感じはしない。
夢の所為でさくらの事を意識しまくっているのに、
それに抗っているのを生暖かい目で見守ってしまうし、
本人自覚のない独占欲や、俺の事好きなくせに、ともやっとしたり、
もう好きじゃん!と突っ込みたくなる。
さくらの地味っ子っぷりは性癖なので、ただただ可愛い。
へらって笑うところとか、ぐっずぐずの泣き顔とか、
梅谷じゃなくても堪らん。
モテそうなのに、恋愛もHも面倒臭いと思っていた梅谷の、
Hの時の興奮度合いも堪らん。
DKとはまたちょっと違う青春に、可愛いが止まらない。
女子が実は友人の方を好きだったりと、波風立たないのも個人的に好感触。
「花とクルミと甘い生活」涼子
「花とクルミと甘い生活」涼子
大洋図書/ihr HertZ Series
○花屋オーナー×世話焼きアシスタント
舞台が花屋という事もあって、小物一つ一つが丁寧に描かれていて、
画面のどこを見ても抜かりなし。
でも、ごちゃごちゃしているとかうるさいといった印象は無く、
世界観に反映されて盛り上げている。
とにかく、佐倉が実を、突き放したり追いかけたり、
子供か!と言いたくなる位、ぶんぶん振り回す。
意地が悪くて我儘、生活能力ゼロで大人げ無さ満載の佐倉。
でもそんな人物がデレるのはやっぱり良い。
そんな佐倉に不満を抱きつつも一生懸命な実は、やっぱり鉄板で可愛い。
絵の印象そのままに、ほのぼの可愛らしいお話で、甘さはかなり控え目。微糖以下。
お仕事メインかな。実のオカン度が高過ぎるのか…
同時収録の「きみのかおがみたい」は、
芸大生×リーマンの一夜の過ち(?)からの居候が始まるお話。
自然に我儘を言える良い関係になっていくのを感じさせる。
こちらの方が、ラブ度ちょい増し。
「日曜日にパウンドケーキ」阿弥陀しずく
「日曜日にパウンドケーキ」阿弥陀しずく
祥伝社/onBLUE comics
○料理男子DK×美人リーマン
父子家庭で家事を切り盛りするDKが、父親の部下にグイグイ行くお話。
吸引力のある間やテンポを、シンプルなコマ割りが引き立てていて、
お話に没頭してしまう。
ただ美人なだけじゃない西田、何かと思考がイレギュラーでタフな武義、
チートキャラ(笑)の武義父、武義の言動に動じない友人と、
キャラがとにかく魅力的。
武義があざといかと思いきや、意外と天然で、DKとは思えない彼氏力の持ち主。
普段あれだけグイグイ行くのに、いざという時の彼氏力たるや!悶えるから!
そのペースに巻き込まれ絡め取られて、西田の険がみるみる取れて、
武義に惹かれていくのが良い!
長年に渡る周囲の奇異な目の所為で、凝り固まった心を解す出会い。
でも、くすっとしちゃう。
若い攻めお約束の、成長した姿も拝める。
二度おいしい。
「旦那様といとおし暮らし」待緒イサミ
「旦那様といとおし暮らし」待緒イサミ
オークラ出版/AQUA COMICS
○呉服屋の若旦那×新人
ひたすら柚樹を愛でて、壮一郎の言葉責めを堪能するお話。
裏家業でコスプレ衣装の通販をやっている呉服屋の壮一郎が、
それを入社したばかりの柚樹に見られて、採寸という見え透いた名目のもと、
Hへと突入。エロくてねちっこい。(褒め言葉)
挿入だけがエロではないと思わせてくれるエロのバリエーション。
しかもただエロいたけじゃなく、
ちゃんと相手への想いの先にエロがあるのが伝わってくる。
壮一郎は、柚樹が本気で嫌がる事はしない、弁えたヘンタイなので、
柚樹も懐深く受け入れてあっまあま。
純情通り越して、最早罪作りな柚樹が可愛い。鎖骨堪らない。
壮一郎の五年の執念が実を結ぶけど、
執着としては他作品に比べるとまだジャブ。
同時収録は、旅行者×パン屋。
一夏(どころか三日)の恋とか、住む世界の違いとか、ハー○クイン的なお話。
こちらもしっかり、攻めの愛はずっしり。
「好いたレベルはどれくらい」館野とお子
「好いたレベルはどれくらい」館野とお子
東京漫画社/MARBLE COMICS
○父親の部下×上司の息子
父親の部下である冴えないサラリーマンを落とそうと、DKが躍起になるお話。
一郎が冴えない。
初登場シーンで、モブだと誤解した程冴えない。
でも、弓彦に振り回されつつも誠実で、読み進めると格好良く見えてくるんだよ…。
呆れ顔の「困った子だな」はずるい。
ゲームのつもりがどんどん本気になって、でもそれに気付いていない弓彦。
子供で強引で我儘で、ぶんぶん振り回すけれど憎めない。
そんな弓彦を「子供すぎてそういう目で見れない」と言いつつも、
無下には出来ない一郎。
一緒にいるのは何だかんだ楽しく、核心を突いてくる率直な言葉は、
ストンと胸に落ちて来てしまう。
最後は、手もなくどうにか押しきる弓彦に、そりゃあ観念するしかないよ。
恐れを知らない子供と、妥協を覚えた大人の攻防戦は、ただただ微笑ましい。